コラム:外国人の在留資格・在留申請にまつわる話
[ブログ]スタートアップビザと「経営・管理」
2024-10-25
兵庫県の記者発表(2024年10月18日10時)によれば、「兵庫県として初となる『スタートアップビザ』による外国人起業家の受入・支援を実施 ~在留資格「経営・管理」の認定を受けた外国人起業家が県内で創業準備を開始~」とのこと。日本で起業しようとする外国人向けの在留資格関連の制度は複数ありますので整理しておきます。
在留資格「経営・管理」の要件
在留資格「経営・管理」とは、企業等の経営者・管理者のための在留資格であり、"経営者"類型でいえば出資しているオーナー、"管理者"類型でいえば、大企業の役員、工場長等が想定されています。「経営・管理」が認められるためには、原則以下の要件が全て満たされる必要があります。
- ①適切な事業所が用意されていること
- ②日本人か、身分系の在留資格(日本人の配偶者等)で働いている外国人に該当する常勤の外国人が2名以上いるか、資本金が500万以上であること
- ③"管理者"類型の場合は、3年以上の実務経験があり、日本人と同等の報酬を受け取ること
- ④事業に継続性・安定性があること
- ⑤事業に応じて、届出を適切に行っていたり、必要な許可を取得していること
上記の要件は、"経営者"類型として、会社を設立したばかりで事業はこれからの場合、或いは会社自体をこれから設立しようとする場合には、その要件が満たされることを事業計画書等の追加資料にて証明することになります。
外国人起業家向けの制度
当該在留資格の前身であるところの「投資・経営」は500万円を実際に投資する者にのみ認められていましたが、現在では投資要件は不要となっています。(ただ"経営者"類型の場合、相応の投資額があった方が良いことはいうまでもありません。)この事に加え、外国人に対し、日本への投資や需要の掘り起こしを期待する国策としての観点から、さらに様々な要件緩和のための施策が近年登場し、やや複雑になってきています。主な3つの制度をわかりやすく説明いたします。
在留期間4月の設定
昔は、これから日本で会社を設立しようとする外国人は、在留資格「短期滞在」で入国、外国人登録を行った上で、その住居地をもって会社の設立登記を行っていました。
ところが、平成24年に外国人登録法が廃止され在留管理制度となると、中長期在留者(3か月以上の滞在者)でないと在留カードが発行されず居住地の基礎が無いため、従来の在留資格では外国人自ら会社の設立登記ができないこととなりました。そこで、このことへの対応策として、在留資格「経営・管理」に在留期間の4月が新たに設けられました。即ち、新会社の登記事項証明書が無くとも、在留資格「経営・管理」(4月)の在留資格認定証明書交付申請が可能となりました。
スタートアップビザ
外国人の創業を促進するための国家事業に、いわゆる"スタートアップビザ"というものがあります。こちらは内閣府が主導するものと経済産業省が主導するものがあり二つは微妙に異なります。
国家戦略特区外国人操業活動促進事業(内閣府主導)
外国人は国家戦略特別区域の地方自治体に事業計画を提出、地方自治体の審査を経て、「確認証明書」が発行されれば、新会社の登記事項証明書が無くとも、この証明書を添付することで、在留資格「経営・管理」(6月)の在留資格認定証明書交付申請が可能となりました。(+6月は①を満たさなくとも更新可能)
冒頭の兵庫県の記者発表は当制度のことを意味します。
外国人起業活動促進事業(経済産業省主導)
外国人は経済産業省の認定を受けた地方自治体等に起業準備活動計画を提出、地方自治体等の審査を経て、「確認証明書」が発行されれば、新会社の登記事項証明書が無くとも、この証明書を添付することで、在留資格「特定活動」(6月)の在留資格認定証明書交付申請が可能となりました。(地方自治体等による6月間の管理・支援を経て、+6月の更新を前提。)
"経営者"類型における各制度の注意事項
下記のとおり、いずれの制度も、冒頭①②④⑤の要件をどこかのタイミングで満たさなければ、継続して「経営・管理」の活動を行うことはできません。
- -在留期間4月
- 入国後4か月の間に、新会社設立が完了し、①②④⑤の要件を満たしていないと在留期間更新ができない。
- -国家戦略特区外国人操業活動促進事業(内閣府主導)
- 入国後6か月の間に、新会社設立が完了し、②④⑤の要件を満たしていないと在留期間の更新が許可されない。また1年の間に①の要件を満たしていないと同じく許可されない。
- -外国人起業活動促進事業(経済産業省主導)
- 入国後1年の間に、新会社設立が完了し、①②④⑤の要件を満たしていないと「特定活動」から「経営・管理」への在留資格の変更が許可されない。
まとめ
留意しておかなければならないのは、上記は起業準備活動を行う道が開かれているというだけであり、「経営・管理」要件の本旨たる事業の継続性・安定性は厳しく審査されるということです。
入国するだけであれば簡単になっているが、1年を超えて「経営・管理」という在留資格で滞在し続けることができるかという意味では、通常の「経営・管理」と何も変わりません。