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英国は密輸の世界的な取り締まりを推進する一方、移民のアウトソーシングを検討している

公開日
2025-04-11
メディア
ISPI
記事要約
イギリス政府は3月31日、40か国以上と国際機関、MetaやTikTokなどのSNS企業とともに人身密輸対策の国際サミットを開催。史上初の国際的な取り組みとして、密輸ネットワークの解体に3,000万ポンド以上を投入し、密輸業者の訴追強化にも資金を拠出すると発表した。

首相キーア・スターマーは、密輸は撲滅可能であり、各国に対し情報共有や資源の連携を呼びかけた。イタリアのメローニ首相もビデオメッセージで、イギリスとの協力の重要性とアルバニアとの移民センター計画の進捗に言及した。

英仏海峡の移民増加と政策対応
2025年に入り、英仏海峡を渡った移民は5,000人を超え、過去最多ペース。2024年には36,816人が渡航しており、依然として注目の移動ルートとなっている。

労働党政権は、前政権のルワンダ移送計画を廃止しつつも、密輸対策を継続。国境警備司令部の創設や、アフリカ・中東の移民流出の根本原因への対策に8,400万ポンドを拠出。庇護申請の迅速化と、安全とされる国からの申請者の送還強化も進めている。

一方、フランスとの新協定を含むEUとの連携強化や、取り締まりの強化により、密航がより危険なものとなり、2024年には82人が海峡で命を落とした。

第三国での「送還拠点」設置構想
イギリスは、庇護申請が却下された人々の送還拠点を国外に設置する構想を模索中。EUが3月に発表した第三国での「リターンハブ」案と歩調を合わせており、従来のルワンダ計画とは異なり、庇護処理後に現地に留まる必要はない。

しかし、こうした「移民管理の外部化」は、人権保護や長期的な持続可能性の観点で課題も指摘されている。

強化策だけでは解決できない移民問題
イギリスとEUはともに、移民抑制を目的とした厳格な取り締まり政策を重視してきたが、海峡横断者は依然として増加中。多くの移民は政策を知らず、紛争、迫害、経済的困窮からの脱出を目的に移動しており、密輸組織は巧みに対策をかいくぐっている。

国際移住センター(MMC)の研究によれば、抑止政策だけでは需要を抑えきれず、安全で合法的な移動ルートの拡充こそが、長期的に密輸ネットワークを弱体化させる鍵であると提言されている。
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