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移民規制と地方自治体の役割

公開日
2025-04-16
メディア
MRSC
記事要約
このブログ記事は、アメリカにおける移民法とその執行に関して、連邦政府と州・地方政府がそれぞれどのような権限と制限を持っているのかを解説しています。

まず、移民の直接的な規制権限はアメリカ連邦政府にのみ与えられており、州や地方自治体が独自に移民を直接規制する法律を制定することは、憲法上認められていません。この原則は1976年の「De Canas v. Bica」判例をはじめとする数々の裁判で確認されています。また、州や地方自治体が連邦政府の移民執行活動に対して差別的な扱いをしたり、それを妨害するような措置を取ることも禁じられています。2024年の「U.S. v. King County」判決では、移民収容者を運ぶ航空会社へのサービス提供を拒否した郡の命令が違法とされました。

しかし、州や地方政府が間接的に移民に関連する法律を定めることは可能で、実際に多くの州がそうした法制度を構築しています。たとえばカリフォルニア州の法律AB 450は、移民関係の職場検査に対する雇用主の義務を定めたもので、連邦の移民執行機関を直接規制していないため合法とされました。また、ワシントン州では、民間移民収容施設で働く収容者に州の最低賃金を支払うよう求める法律が合憲と判断されました。これらの法律は、移民政策に関連しながらも、連邦政府の権限を直接侵害していないことが評価されています。

さらに、移民執行に対して州や地方政府がどの程度協力する義務があるかという点については、「反強制原則(anticommandeering doctrine)」という法理が重要です。この原則により、連邦政府は州や地方政府に移民法の執行を強制することはできず、協力はあくまで任意とされています。過去の最高裁判例や「U.S. v. California」などの裁判では、この原則が州の自立性を保障する根拠となりました。

この原則に基づき、ワシントン州は「Keep Washington Working Act」を制定し、地方警察などが移民のステータスを質問したり、連邦の要請だけで個人を拘束したりすることを制限しています。また、州の資源を連邦移民捜査に使うことも基本的には禁じられています。現在、この法律の違反が疑われる郡や保安官事務所に対し、州政府が訴訟を起こしている状況です。

一方で、州や地方政府にも従わなければならない連邦法があります。たとえば、8 U.S.C. §1373は移民ステータスに関する情報の保有や連邦との情報共有を妨げることを禁じており、8 U.S.C. §1324(a)は、不法滞在者を雇用することを禁じています。地方自治体も公共事業などで契約業者を通じて労働力を確保する際には、これらの法令を順守する必要があります。

このように、移民政策をめぐる州と連邦の関係は複雑であり、地方政府がどのように関与できるのかについては、法的判断を慎重に行う必要があります。そのため、自治体が移民に関する方針や対応を決定する際は、法律の専門家と相談することが推奨されています。
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