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ズッピ枢機卿が移民問題について語る

公開日
2025-11-18
メディア
The Catholic Herald
記事要約
イタリア司教協議会会長でボローニャ大司教のマッテオ・マリア・ズッピ枢機卿は、テレビ番組の出演で、移民を受け入れなければイタリアは「取り返しのつかない衰退」に向かうと警告した。出生率の低下と人口高齢化が進む中、特に北部工業地帯では既に労働力不足が深刻で、移民なしでは産業が成り立たない状況にあると述べた。

枢機卿は、エミリア=ロマーニャ州の企業が移民労働者に依存している現状を指摘し、「移民は必要だ」「移民なしでは企業が立ち行かない」と強調した。これは、少子化と高齢化が進むイタリアで製造業、農業、介護など幅広い分野で労働力不足が生じているという経済学者の指摘とも一致する。

同時に、移民受け入れを経済需要にのみ基づいて行う危険性にも言及した。ズッピ枢機卿はベネディクト16世の教えを引用し、利益のみを追求する移民政策は労働者の人間性を損ない、貧困や搾取を生むと警告。労働保護が不十分な制度は「人間の尊厳を損なう形態」を生みかねないと述べた。

そのため、移民政策の中心に据えるべきは「全人的な包摂」であり、移民が社会の単なる「歯車」ではなく、生活を再建できる環境が必要だと強調した。また、ベネディクト16世が示した「移住しなくてもよい権利」に触れ、移民を受け入れるだけでなく、故郷を離れざるを得ない状況を減らすことも正義のために不可欠だと述べた。

イタリア司教協議会は近年、移民を「避けられない現実」であると同時に「強い倫理的責任を伴う課題」と位置づけ、国家が人口減少による労働需要に応えるだけでなく、人間の尊厳を重視した移民政策を採るべきだと繰り返し主張している。
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イタリア