世界の移民・難民
関連ニュース

インドは移民管理を武器にして、海外在住の住民を黙らせようとしている

公開日
2025-09-07
メディア
ALJAZEERA
記事要約
ニターシャ・コール教授は、英国在住の政治学者であり、インド出身の英国市民です。彼女はこれまでにインドの民主主義やカシミール問題、右派政治に関する著書や論文を多数発表してきました。長年保持していたOCI(海外市民)ステータスは、2025年5月にインド政府により突然取り消されました。

OCIはインド国外に住むインド系外国人に与えられる特別なビザで、長期的なインド訪問を可能にします。取り消しは法律上可能ですが、コール氏への通知は「反インド活動に従事」とのみ記載され、具体的な根拠は示されていません。

コール氏は、インド政府による少数派弾圧や右派団体RSSの分断的な政治を批判してきました。彼女の意見は、国際的な民主主義指数や報道の自由に関する報告とも一致しています。

このようなOCIの取消しはコール氏に限らず、過去9年間で120件以上あり、2024年だけで57件、2025年には既に15件に達しています。多くは政府に批判的な学者、記者、活動家です。例として、スウェーデン在住の学者アショク・スウェイン氏や、米国の記者ラファエル・サッター氏のOCIも取り消されています。

インドでは、政権批判者に対する弾圧や言論封殺が年々強まっており、民主主義の後退が指摘されています。特にカシミールでの攻撃後、政府はSNSアカウントの大量ブロックなどの措置を取り、報道や言論の自由に深刻な影響を与えています。

インド国外の批判的な声にも圧力をかけるため、OCIの取り消しが「移民統制の兵器化」として使われているとの指摘もあり、RSF(国境なき記者団)はこれを「沈黙の強制」と評しています。

英国には200万人以上のインド系住民がいますが、多くが現在のインドの方向性に懸念を抱き、批判すれば渡航制限を受けるのではないかと恐れています。

筆者は、英国政府は貿易協定などを優先してインドの民主主義問題に沈黙しているが、それは結果的にBJP政権を助長する行為であると批判します。

モディ首相は国外在住のインド人に貢献を呼びかけていますが、それには「自由に意見を述べる権利」も含まれるべきであり、政府への批判が敵視されるようでは、インドへの貢献の可能性そのものが損なわれると警告しています。
タグ
インド