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移民削減は住宅危機の改善にはつながらない可能性

公開日
2025-08-30
メディア
RTE
記事要約
アイルランドの人口は急速に増加しており、それが深刻な住宅不足に拍車をかけている。最新の中央統計局(CSO)のデータによると、2025年4月までの1年間で移民の純増(入国者数から出国者数を差し引いた数)は約6万人、自然増(出生数-死亡数)は約2万人となり、年間で8万人近く人口が増加した。現在の総人口は約545万人に達し、CSOの「高成長シナリオ」さえ上回る勢いだ。

しかし、住宅供給はこれに追いついていない。国家住宅委員会の試算では、既に住宅の不足数は25万戸に達し、過去10年でさらに10万戸分の不足が増加したとされる。今後の世帯構成を1世帯あたり2.2人と仮定すると、住宅需要はますます拡大すると見られる。

政府は、電気・水道などのインフラが整った土地の不足解消や、遅延している都市計画制度の改革を優先課題として掲げ、住宅建設の加速を図っている。また、外国投資を呼び込むため、賃料制限の緩和やアパート建設基準の緩和などの施策も進行中だが、これらには住民への負担増や居住の質の低下といった副作用もある。

一部では「移民を減らせば住宅需要が抑えられる」との声もあるが、専門家はこれに反論している。ダブリン大学のバイロン博士によれば、建設業従事者の約2割が移民であり、移民の減少は住宅需要の緩和にはつながるものの、供給能力も削がれるため、結果として住宅不足の解消にはあまり寄与しないという。また、移民は医療や介護などの重要分野でも労働力として必要とされている。

さらに、移民は「賃貸用集合住宅」の主要な入居者層であり、移民の減少はこれらの投資意欲の低下にもつながる可能性がある。総じて、移民の制限が住宅問題の根本的解決につながるという考え方は、現時点の証拠では裏付けられていない。
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アイルランド