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国境から職場まで:ヨーロッパはいかに移民管理を改革しているのか

公開日
2025-08-28
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InfoMigrants
記事要約
ヨーロッパの移民政策は近年、国境管理から労働市場内部での規制へと大きくシフトしている。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究によれば、オーストリア、ドイツ、アイルランド、イギリスの4カ国では、移民が国内に入国した後の就労条件に厳しい制限を加えるようになっている。具体的には、地元労働者がいないことを証明する「求人テスト」や、平均より高い賃金や資格を求める基準、一定期間特定の雇用主に縛りつける制度などが導入されている。難民に対しては、就労までの待機期間など、さらに厳しい規制が課されることもある。

かつては移民受け入れに比較的寛容だったアイルランドやオーストリアも、現在ではドイツやイギリスと同様の制限を課すようになり、4カ国はほぼ同様の制度に収束している。これは、各国の経済体制やEUの影響よりも、国内政治や世論の圧力によるものであり、特に2004年と2007年のEU拡大による労働市場の開放が転機となった。

その一方で、各国は高度人材の確保には積極的で、イギリスはAIやバイオサイエンスなど先端分野での人材獲得を狙った制度改革を進め、ドイツは「オポチュニティ・カード」を導入して人材を呼び込もうとしている。アイルランドやオーストリアも同様に、特定スキルを持つ人材向けの優遇制度を展開している。

しかし、このような労働市場内での保護主義的政策は、短期的には政治的に有利でも、長期的には深刻な経済的リスクを伴う。介護、建設、農業などの分野ではすでに人手不足が深刻であり、移民労働者へのアクセスを制限すれば、経済の柔軟性や成長力が損なわれ、人口高齢化問題も悪化しかねない。雇用主にとっては、一時的には人材の確保がしやすくなるものの、労働市場全体の活力が低下すれば、結果的に経済全体が損失を被ることになる。

この研究は、欧州各国が移民管理において、国境を閉ざすのではなく、職場という見えにくい領域で規制を強化するという新たな形の保護主義を採っていると指摘する。これは、国民に対して「地元労働者を守っている」とアピールできる一方で、企業の需要にもある程度応える現実的な手段となっている。ただし、その裏で、移民の権利や自由は制限され、社会的・経済的な不平等が拡大する危険性がある。ヨーロッパの移民政策は、依然として各国政府の手に委ねられており、経済的ニーズと政治的プレッシャーの間で複雑なバランスを取ろうとする動きが続いている。
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