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外国人労働者を“現代奴隷”にしないために企業ができることは。「技能実習」→「育成就労制度」は「看板の掛け替えにすぎない」との指摘も

公開日
2025-10-20
メディア
ハフポスト日本版
記事要約
10月15日に開かれたオンラインセミナーでは、「外国人労働者を現代奴隷にしないために私たちに何ができるか」をテーマに、企業関係者や弁護士ら約150人が参加した。2027年4月からは、廃止が決まった技能実習制度に代わり「育成就労制度」が新設される予定だが、弁護士の指宿昭一氏は「制度名を変えただけで本質的な改善にはなっていない」と批判した。

技能実習制度では、実習生が来日前に母国の送出機関へ高額な手数料を支払うことが大きな問題となってきた。ベトナム人実習生の場合は平均で約100万円にのぼり、借金をして渡日するケースも多い。こうした負担が原因で、来日後も借金返済のために過酷な労働を強いられる「債務労働」の状態に陥ることが指摘されている。さらに、パスポートの取り上げや残業代の未払い、転籍の制限など、実習生の権利が守られていない実態も報告されている。

一部の企業では、技能実習生が支払った手数料を払い戻したり、採用にかかる費用を企業側が負担したりする取り組みも始まっている。JICAが関係機関と立ち上げた「JP-MIRAI」では、労働者に費用を負担させない「公正なリクルート」を推進しており、少しずつ改善の動きも見られる。しかし、多くの実習生を受け入れているのは中小企業であり、手数料の全額負担は現実的に難しいという課題が残っている。

新たに導入される育成就労制度では、手数料の上限を「来日後の給料2カ月分」と定める案が検討されているが、専門家は依然として返済負担が重く、債務労働を助長するおそれがあると懸念している。また、転籍が認められるのは「やむを得ない事情」がある場合に限られ、期間の制約もある。家族の帯同も認められず、実習生が子どもと数年間離れて暮らさざるを得ない状況は変わらない。こうした点から、指宿氏は「育成就労制度は技能実習制度の問題を根本的に解決していない」と強調した。

さらに、技能実習制度で広がった手数料搾取の仕組みが、他の在留資格にも及んでいることが明らかになっている。通訳やエンジニアとして働く「技術・人文知識・国際業務」ビザの取得を希望する外国人が、悪徳ブローカーに高額な手数料を支払う被害が相次いでいるという。

海外では、外国人労働者が家族を帯同できたり、転職の自由が認められたり、手数料の徴収が禁止されている国も多い。日本でも同様の基準に合わせて制度を見直すことが求められている。弁護士らは、問題が起きた際にすぐ弁護士や通訳に相談できる体制を整えることも重要だと指摘しており、真に搾取のない労働環境を実現するためには、抜本的な制度改革が必要だとしている。
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技能実習,育成就労

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