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英国労働党の移民白書:レビュー

公開日
2025-11-10
メディア
Oxford Law Blogs
記事要約
2025年5月、英国労働党政権は新たな移民ホワイトペーパーを発表した。そこで提案された政策は、技能労働者ビザの要件強化、永住申請までの年数を5年から10年へ延長、海外からの介護労働者の受け入れ縮小、留学生の取り締まり強化など、多方面で移民規制を厳格化するものとなっている。政府はこれにより経済危機や労働市場の問題が改善し、不法就労が抑制できると主張している。

しかし、筆者はこうした政策が、英国の植民地主義的な労働搾取の構造を温存し、むしろ移民労働者を非正規・不安定な労働へと追いやることで搾取を強化すると批判する。政府は移民問題を「犯罪」「濫用」という言葉で描き、過去から継続する構造的な搾取や不平等を覆い隠しているという。

ホワイトペーパーは「低技能移民」が公共サービスや住宅供給に負担をかけ、英国人の雇用機会を奪っていると主張する。しかし実際には、介護などの低賃金・不安定な仕事を英国人が避けているため、海外出身労働者が担っている現実がある。特にそれはナイジェリア・ジンバブエ・インドなど、かつて英国に植民地支配された国々からの移民に偏っている。

学生ビザや労働ビザの「濫用」を強調する政府に対し、筆者は問題は制度に依存する大学や搾取的な雇用主の側にあるにもかかわらず、責任が常に移民側へ転嫁されていると指摘する。規制を強めることで移民は正規就労が難しくなり、より危険で搾取的な非公式労働市場に追い込まれる。

さらに、ホワイトペーパーの言語は「管理」「制御」「歪み」といった語を用い、移民を現代に突然現れた問題として描くことで、英国が長年植民地支配を通じて海外労働力を依存的に利用してきた歴史を隠蔽している。

最終的に、ホワイトペーパーは移民縮小が経済問題の解決策であるかのように描くが、実際には搾取構造を強化し、移民をより脆弱な立場へ追いやるだけである。労働市場や経済の根本的な問題には触れず、移民をスケープゴートとする言説に依存している点が批判される。
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